今回は、鉄道の運賃についてです。
時々、ご意見をいただくことがあるのですが、鉄道を利用していて次のように疑問に感じたことがあるという方がいらっしゃると思います。
どうして隣同士の駅で運賃が違うことがあるの?
文字だけだと分かりにくいので図で例を示すとこんな感じです。

図は、群馬県の高崎駅から1つ隣の駅までの運賃を示したものです。
高崎駅から、北高崎駅または高崎問屋町駅までの運賃は150円なのに対し、倉賀野駅までの運賃は190円なっています。
このように、今いる駅の1つ隣の駅同士で運賃が異なることについてクレームが入ることがあります。
この記事では、鉄道の運賃がどのように決まっているのかについて簡単に紹介したいと思います。
この記事は初心者の方向けに鉄道の運賃の基本的な考え方を紹介するものです。
運賃計算の特例など、複雑なことや特殊な場合については扱いません。
結論
まずはこの記事の内容まとめておきます。
①営業キロに応じて決まる
②幹線と地方交通線で運賃体系が異なる
③幹線でも特定のエリアとそれ以外で運賃体系が異なる
④JR会社間でも運賃体系が異なる場合がある
①はこの記事の結論で、鉄道の運賃の考え方です。
ただそれだけで終わってしまうのはつまらないので、路線や会社間で運賃計算が異なるということを②〜④のパートでご紹介したいと思います。
①営業キロに応じて決まる

鉄道の運賃は、駅の数ではなく営業キロに応じて決まっています。
営業キロとは、簡単に言うと路線の長さのことです。
営業キロが長くなるにつれて、運賃も上がっていきます。
(例)JR本州3社の幹線のみを利用する場合の運賃
営業キロ | 運賃 |
1〜3 | 150円 |
4〜6 | 190円 |
7〜10 | 200円 |
11〜15 | 240円 |
16〜20 | 330円 |
21〜25 | 420円 |
26〜30 | 510円 |
31〜35 | 590円 |
36〜40 | 680円 |
41〜45 | 770円 |
46〜50 | 860円 |
51〜60 | 990円 |
61〜70 | 1,170円 |
71〜80 | 1,340円 |
81〜90 | 1,520円 |
91〜100 | 1,690円 |
・・・ | ・・・ |
JR本州3社の幹線とは、東海道本線、山陽本線、北陸本線、常磐線などの主要路線が該当します。
営業キロは、時刻表や乗換検索サービスで確認が可能です。
営業キロは小数点以下は切り上げ、1の位までの数で考えます。例えば、1.2kmは、2kmとして考えます。
おすすめの時刻表はこちらです。
Ⅰ JR時刻表 交通新聞社
駅の「みどりの窓口」に置かれているものと同じ時刻表です。
列車の時刻だけでなくおトクなきっぷの情報やきっぷのルール(いわゆるピンクのページ)もまとめられており、きっぷに関して知識をつけたい方にもおすすめです。
Ⅱ コンパス時刻表 交通新聞社
カバンに入れて持ち歩けるタイプの時刻表です。コンパクトですが、JR全線・全駅の時刻表が掲載されています。
営業キロが確認できるおすすめの乗換案内アプリはこちらです。


(例)高崎駅から隣駅までの運賃

高崎駅から、北高崎駅・高崎問屋町駅までの営業キロはそれぞれ2.4km、2.8kmです。
小数点以下は切り上げますのでいずれも3kmとみなし、運賃は150円です。
一方、高崎駅から倉賀野駅までの営業キロは4.4km、小数点以下を切り上げて5kmとみなすため190円となります。
隣駅同士で運賃が異なる場合があるのは、鉄道の運賃が営業キロに応じて決まっているからであるということがお分かりいただけると思います。
②幹線と地方交通線で運賃体系が異なる

JR線は幹線と地方交通線に分けられます。
これは国鉄再建法に基づき行われた分類です。
簡単に書いてしまうと輸送密度が多い主要路線が「幹線」
輸送密度が低く今後の維持が難しいと想定された路線が「地方交通線」です。
そのため、地方交通線は幹線と比べて割高な運賃体系となっています。
東海道本線、山陽本線、北陸本線、中央本線、信越本線、東北本線など
津軽線、五能線、越後線、八高線、大糸線、高山本線、身延線など
とは言っても、30年以上前に定められたものなので現状とそぐわない点もあります。
地方交通線の運賃を計算する際には、「換算キロ」や「擬制キロ」という考え方が用いられますが、この記事は初心者向けのものなので扱いません。
(例)JR本州3社の地方交通線のみを利用する場合の運賃
営業キロ | 地方交通線の運賃 |
1〜3 | 150円 |
4〜6 | 190円 |
7〜10 | 210円 |
11〜15 | 240円 |
16〜20 | 330円 |
21〜23 | 420円 |
24〜28 | 510円 |
29〜32 | 590円 |
33〜37 | 680円 |
38〜41 | 770円 |
42〜46 | 860円 |
47〜55 | 990円 |
56〜64 | 1,170円 |
65〜73 | 1,340円 |
74〜82 | 1,520円 |
83〜91 | 1,690円 |
92〜100 | 1,880円 |
例えば営業キロが100kmの時、幹線なら1,690円、地方交通線なら1,880円です。
地方交通線がやや割高であることが分かります。
③幹線でも特定の区間とそれ以外で運賃体系が異なる
幹線は幹線でも、特定の区間においては通常の幹線運賃と運賃体系が異なる場合があります。
割安になる区間

この区間のみを利用する場合ほかの幹線と比べて割安な運賃体系が適用されます。
・JR東日本
→東京電車特定区間、山手線内
・JR西日本
→大阪電車特定区間、大阪環状線内
運賃表はこちら。
割高になる区間

割高になる区間としては、次のような加算運賃が設定されている区間が挙げられます。
・千歳線 南千歳〜新千歳空港 (JR北海道)
・関西空港線 日根野〜関西空港 (JR西日本)
・瀬戸大橋線 児島〜宇多津 (JR四国)
・宮崎空港線 田吉〜宮崎空港 (JR九州)
(例)関西空港線の加算運賃
関西空港線を利用する場合は、通常の幹線の運賃に加えて次の加算運賃が適用されます。
区間 | 加算運賃 |
日根野~関西空港 | 220円 |
日根野~りんくうタウン | 160円 |
りんくうタウン~関西空港 | 170円 |
例えば、りんくうタウン〜関西空港(営業キロ6.9km)をする場合、
通常運賃(幹線)は6.9km≒7kmの200円、
加算運賃は170円。
よって200円+170円=370円が運賃となります。
特殊な場合

瀬戸大橋線経由の特定区間には、特定運賃が設定されています。
特定区間 | 特定運賃 |
児島〜宇多津 | 440円 |
児島〜坂出・丸亀・讃岐塩屋・多度津 | 530円 |
上の町〜宇多津・丸亀 | 540円 |
④JR会社間でも運賃体系が異なる場合がある

JR北海道、JR四国、JR九州の運賃体系は本州3社と異なっています。(基本的に本州3社よりも割高になります。)
(例)幹線のみを利用する場合の、本州3社と北海道・四国・九州の運賃比較
営業キロ | 本州3社 | 北海道 | 四国 | 九州 |
1〜3 | 150円 | 200円 | 170円 | 170円 |
4〜6 | 190円 | 250円 | 210円 | 210円 |
7〜10 | 200円 | 290円 | 220円 | 230円 |
11〜15 | 240円 | 340円 | 260円 | 280円 |
16〜20 | 330円 | 440円 | 360円 | 380円 |
21〜25 | 420円 | 540円 | 460円 | 480円 |
26〜30 | 510円 | 640円 | 560円 | 570円 |
31〜35 | 590円 | 750円 | 670円 | 660円 |
36〜40 | 680円 | 860円 | 770円 | 760円 |
41〜45 | 770円 | 970円 | 870円 | 860円 |
46〜50 | 860円 | 1,130円 | 970円 | 950円 |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
特に、JR北海道が割高であることが分かります。
これは、経営状況的にそうせざるを得ないものと考えられます。
このように、一括りに「JR」といっても会社の経営状況などで運賃体系が異なるのです。
まとめ
今回は、鉄道の運賃はどのように決まっているのかについて紹介しました。
内容を振り返ります。
①営業キロに応じて決まる
→駅の数ではなく、路線の長さで決まります。
②幹線と地方交通線で運賃体系が異なる
→地方交通線はやや割高になっています。
③幹線でも特定のエリアとそれ以外で運賃体系が異なる
→他と比べて特別に安かったり、高かったりする区間があります。
④JR会社間でも運賃体系が異なる場合がある
→本州3社と北海道・四国・九州とでは運賃体系が異なっています。
今回は、鉄道の運賃がどう決まっているかや、会社・エリアによる違いがあることについてざっくりと紹介しました。
できるだけ、易しい内容になるようにしたため、複雑な特例や運賃計算については扱っていません。
この記事見て、鉄道の運賃について興味が出てきたという方は以下の参考欄に詳しい情報が書かれたページのURLを記載しておきますので、ぜひご覧ください。
今回も、ご覧いただきありがとうございました!